サンガ川流域の3か国保護地域
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生物相
登録範囲は熱帯林が広がっている地域である。熱帯林にはところどころ開けた湿地帯が存在している。それらはバイ (baï) と呼ばれるが、規模が小さいものはヤンガ (yanga) と呼ばれる[3]。バイを作るのはマルミミゾウである。マルミミゾウは、熱帯の植物からだけでは生存に必要なミネラルを獲得できないため、特に玄武岩の浸食が見られる土地を掘り返し、結果的に水辺にミネラル分の豊富な土壌の露出した湿地を作り出す[23]。これがバイである。ミネラル分を必要とするのはマルミミゾウだけではないため、バイには数多くの野生生物たちがやってくる[24]。
また、登録範囲は、類人猿の貴重な生息地となっている点も重要である。近隣諸国の世界遺産には、ゾウの生息数で上回るロペ=オカンダの生態系と残存する文化的景観(ガボンの世界遺産、2007年)、植物相に秀でるジャー動物保護区(カメルーンの世界遺産、1987年)が存在していた[25]。にもかかわらず、この世界遺産が登録されたのは、面積の広大さもさることながら、その中に棲息する類人猿の数が重視されたことが大きかった[25]。
それらも含め、植物相・動物相で特徴的な種を挙げると、以下の通りである[26]。
動物相
哺乳類は116種が棲息し、霊長類はニシローランドゴリラ(絶滅寸前)、チェゴチンパンジー(絶滅危惧種)、ハイアカコロブス、シロエリマンガベイ、クロコロブスなど18種である[27][21]。ほかにも危急種のマルミミゾウやカバ、準絶滅危惧のヒョウ、アフリカゴールデンキャット、ボンゴ、オオセンザンコウなどが棲息している[27]。ボンゴ以外にもシタツンガなどの数種類の絶滅の危機に瀕しているレイヨウが見られる[28]。
ラムサール登録地を含んでいるように、鳥類も豊富で429種が確認されている。その中には、危急種のヒメチョウゲンボウ、キイロヒゲヒヨドリ、ズアカハゲチメドリなどが含まれる[27]。ニシツバメチドリ、ズグロキハタオリも見られる[20][21]。
ほかに爬虫類と両生類がともに約30種、魚類が246種確認されている[27]。具体的な種としてはナイルワニ、ヒゲナガヒレナマズ、ムベンガなどが挙げられる[20][28]。
植物相
確認されている植物は1,122種になる[29]。そのうち、世界遺産登録の推薦書31頁で言及されているIUCNレッドリストで評価済みの種は以下の通りである[30]。
- アオイ科:
- コティベ Nesogordonia papaverifera - コートジボワール由来の呼称 kotibé やガーナ由来の呼称ダンタ(danta)[31]で木材として流通し、カメルーンでは ovoué という俗名で呼ばれる[32]。
- アコデイアケデ Pterygota bequaertii - Pterygota属。akodiakede はコートジボワールでの呼称[31]。商業名コト(koto)[33][34]やアフリカンプテリゴタ(英: African Pterygota)[33]で木材として流通する。
- エイヨング Sterculia oblonga(シノニム: Eribroma oblonga)- ピンポンノキ属。eyong はカメルーンでの呼び名[31]。
- アカテツ科:
- ムクルング Autranella congolensis - mukulungu はコンゴなどでの呼び名[31]。大猿や象の栄養源となる[30]。
- ウルシ科:
- カキノキ科:
- ディオスピュロス・クラスィフロラ Diospyros crassiflora - 同じカキノキ属の D. piscatoria と共に商業名アフリカンエボニー[35][36]や真黒(マグロ)[36]で木材として流通する。
- キョウチクトウ科:
- Neoschumannia kamerunensis - 川沿いの地帯で記録されているつる植物[30]。
- センダン科:
- コシポ Entandrophragma candollei - kosipo はコートジボワールなどでの呼称。カメルーンでは atom-assié、コンゴでは diamuni という呼び名がある[31]。
- サペリ Entandrophragma cylindricum - sapelli はカメルーンでの呼称の一つで、同国では他に assie、コンゴでは lifaki、中央アフリカでは m'boyo という呼び名がある[31]。木材として流通する[37][38]。
- シポ Entandrophragma utile - sipo とはコートジボワールでの呼称。商業名ユティルで木材として流通し、カメルーンでは assié[39] や asseng-assie、コンゴでは momboyo、中央アフリカでは bokoi という呼び名がある[31]。
- ササンドラアカジュ Khaya anthotheca - Acajou Sassandra はコートジボワールでの呼称で、カメルーンでは mangona という呼び名がある[31]。同属の別種アフリカマホガニー K. ivorensis や K. nyasica と共に商業名アフリカンマホガニーで木材として流通する[40]。
- オオバアカジュ Khaya grandifoliola - K. ivorensis 同様木材が得られる[31]。
- ボセ Leplaea cedrata(シノニム: Guarea cedrata)- bossé とはコートジボワールでの呼称で、カメルーンでは ebangbemva という呼び名がある[31]。商業名ホワイトグアレア(英: white Guarea)で木材として流通する[41]。
- Leplaea thompsonii(シノニム: Guarea thompsonii)- 商業名ブラックグアレア(英: black Guarea)で木材として流通し、カメルーンでは ebanghemwa という呼称で呼ばれる[41]。
- ディベトウ Lovoa trichilioides - dibétou とはコートジボワールでの呼称[31]。アフリカンウオルナット(英: African walnut)や dibétou などの商業名で木材として流通し、カメルーンでは bibolo という呼称で呼ばれる[42]。
- アボディレ Turraeanthus africanus - avodiré とはコートジボワールでの呼称[31]。商業名アボジレで木材として流通する[43]。
- ツクバネカズラ科:
- ツゲモドキ科:
- Drypetes molunduana[注 1] - ハツバキ属。
- トウダイグサ科:
- Mallotus oppositifolius[30] - アカメガシワ属。
- エセサング Ricinodendron heudelotii[30] - esesang はガボンでの呼称で、カメルーンでは ezegang、コンゴでは sanga-sanga という呼び名がある[31]。
- バンレイシ科:
- ヒウア科(Huaceae):
- アフロスティラクス・レピドフィルス[注 3] Afrostyrax lepidophyllus - ウバンギ川流域の英語圏では country onion の通称で呼ばれる[30]。
- フクギ科:
- Garcinia kola - 樹皮がヤシ酒の香りづけに用いられてきた[30]。
- マメ科:
- アフゼリア・ビピンデンシス Afzelia bipindensis - アフゼリア属。同属の別種 A. pachyloba などと共に商業名アフゼリア(Afzelia)やドゥシエ(doussié)、アパ(apa)、アフリカケヤキで木材として流通する[45]。
- ヤタンザ Albizia ferruginea - yatandza とはコートジボワールでの呼称で、カメルーンでは evouvous、コンゴでは sifou-sifou や musase という呼び名がある[31]。同じネムノキ属の別種メペペ A. adianthifolia などと共に商業名アルビジア(Albizia)で木材として流通する[46]。
- パオロザ Bobgunnia fistuloides(シノニム: Swartzia fistuloides)[注 4] - pau rosa はコンゴでの呼び名で、ほかに kisasamba ともいう[31]。商業名パーローズ(pau rosa)で木材として流通する[48]。
- バンジェ Millettia laurentii - wengè はコンゴなどでの呼び名で、カメルーンには awong という呼び名がある[31]。 商業名ウエンジ[49]あるいはウェンジ(wenge)で木材として流通し、カメルーンでは awong という俗名で呼ばれる[50]。
- ペリコプスィス・エラタ Pericopsis elata - 商業名アフロルモシアあるいはアフロモシア(Afrormosia)[51]で木材として流通し、カメルーンでは andejen、コートジボワールではアサメラ(assamela)という俗名で呼ばれる[52]。ワシントン条約(CITES)附属書IIにも記載されている[53]。
また以下の種は推薦書で Vulnerable と評価されていることとされているものの、実際にはIUCNレッドリストにおいては未評価である。
他にはラフィアヤシやラン科、クズウコン科の植物も見られる[20][21]。
注釈
- ^ Cheek (2004) では種小名が molundana とされている。
- ^ 世界遺産登録の推薦書においては Vulnerable 扱いとされている[30]が、IUCNレッドリストver 3.1では2009年と2018年の2度に評価が行われ、いずれの際も Vulnerable より深刻度の低い Least Concern の評価とされている[44]。
- ^ カナ表記は『朝日百科 植物の世界』第6巻、朝日新聞社、1997年、317頁、ISBN 4-02-380010-4 より。
- ^ 1998年のIUCNレッドリストでの評価は Endangered で、世界遺産登録の推薦書においても同じ扱いとされている[30]が、IUCNレッドリストver 3.1では深刻度のより低い Least Concern の評価に変更されている[47]。
出典
- ^ ステファン・ブレイク 2012, p. 2
- ^ a b 岡安直比 著「ヌアバレンドキ国立公園」、竹内啓一 編『世界地名大事典3 中東・アフリカ』朝倉書店、2012年、723頁。
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- ^ 世界遺産検定事務局 2013, p. 111
- ^ 古田 & 古田 2013, p. 64
- ^ 谷治正孝監修『なるほど知図帳・世界2013』昭文社、2013年、p.136
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- ^ Appendices (CITES). 2018年5月21日閲覧。
- ^ a b World Heritage Centre 2012, p. 156より一部を翻訳の上、引用。
- ^ UNEP-WCMC 2012, p. 6
- ^ IUCN 2012, p. 46
- ^ a b ステファン・ブレイク 2012, pp. 90–92
- ^ a b 「売られる野生動物 / 肉の消費急増」「食い尽くされる森 密猟手当たり次第 市場へ」『朝日新聞』2012年10月29日朝刊1・2面
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