明 細 書 ガス分離体固定構造体及びそれを用いたガス分離装置 技術分野
本発明は、 ガス分離体固定構造体、 及び当該ガス分離体固定構造体を用いたガ ス分離装置に関する。 背景技術
従来、 多成分混合ガスから特定のガス成分のみを得る方法として、 有機又は無 機のガス分離膜によって分離する方法が知られている。
膜分離法に用いられる分離膜は、 水素分離膜としてポリイミドゃポリスルホン などの有機高分子膜及びパラジウム又はパラジウム合金膜などの無機化合物膜が 知られている。 特に、 パラジウム又はパラジウム合金膜は耐熱性もあり、 また極 めて高純度の水素を得ることができる。
パラジウム又はパラジウム合金は、 水素を固溶して透過させる性質があり、 こ の性質を利用し、 パラジウム又はパラジウム合金からなる薄膜は水素を含有する 混合ガスから水素を分離する水素分離体に広く用いられている。
関連する従来技術として、 特開昭 6 2 - 2 7 3 0 3 0号公報、 特開昭 6 3— 1 7 1 6 1 7号公報において、 多孔質基体の一表面にパラジウム又はパラジウム合 金からなるガス分離膜を被覆したガス分離体が開示されており、 多孔質基体はガ ラス、 酸化アルミニウム等のセラミックスからなるものである。 ガス分離膜のみ では機械強度が充分ではないので、 ガス分離膜を多孔質基体に被覆させている。 このようなガス分離体が組み込まれたガス分離装置は、 ガス分離体の一方の側 より被処理ガスを導入し、 特定のガスのみがガス分離体を透過し、 ガス分離体の 他方の側より精製された水素ガスが得られる構造を有する。 従って、 被処理ガス 側と精製ガス側とを気密に分離して、 ガス分離体と支持体との接合部から被処理 ガスが精製ガス側に漏洩しないことが重要となる。 一方、 ガス分離体を使用して 水素ガスを効率良く分離するためには、 水素原子等がガス分離膜を拡散する速度
を速くするため、 5〜2 0気圧で 3 0 0 以上、 好ましくは 5 0 0 °C以上という 高温、 高圧で分離することが有利である。
この条件でのガス漏洩を防止するために、 一般的にはガス分離体と支持体とを ガラス、 ろう材等により接合すること (ガラス接合、 ろう接合) が行われている 。 また、 ガスの処理温度が 2 5 0 °C以下である場合には、 樹脂又はゴム製の〇リ ングを用いてガス分離体と支持体の間の気密性を確保することも行われている。 しかし、 前述のガラス接合、 又はろう接合によってガス分離体と支持体とを接 合すると、 熱応力によりガス分離体を構成する多孔質基体が破壊されたり、 熱サ ィクルの負荷に伴ってガス分離体と支持材との間の気密性が低下する等の問題の 発生が想定され得る。 更に、 ガス分離体と支持体とのクリアランスを厳密に制御 してこれらを接合する必要性があるばかりでなく、 接合温度が高温であるため、 熱応力により歪みを生ずる等の不具合が生ずることも想定される。
また、 樹脂又はゴム製の〇リングを用いてガス分離体と支持体の間の気密性を 確保する場合、 ガスの処理温度が 2 5 0 超であると当該気密性を充分に確保す ることが実質的に困難であり、 使用可能な温度範囲が限定されていた。
本発明は、 このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、 その目的とするところは、 熱応力によるガス分離体を構成する基体の破壊や、 熱 サイクルの負荷による、 ガス分離体とこれを支持する支持材との間の気密性低下 が起こり難いとともに、 高温条件下においても使用可能なガス分離体固定構造体 、 及び、 当該ガス分離体固定構造体を用いたガス分離装置を提供することにある
発明の開示
即ち、 本発明によれば、 多孔質セラミックスからなる軸方向に貫通 を有する 筒状基体の少なくとも一方の表面上にガス分離膜が形成されてなるガス分離体を 備えたガス分離体固定構造体であって、 前記ガス分離体の一方の開口端部には蓋 状金属部材が、 他方の開口端部には環状金属部材が、 各々シール部材を介して固 定されており、 各々の前記シール部材がグランドパッキンであることを特徴とす るガス分離体固定構造体が提供される。
本発明においては、 蓋状金属部材が、 一方のグランドパッキンに対して、 筒状 基体の軸方向に締付圧力を付与する蓋状又は環状の第 1のパッキン押さえと、 一 方のグランドパッキンの移動を抑制する環状又は蓋状の下部ストッパーにより構 成されるとともに、 環状金属部材が、 他方のグランドパッキンに対して、 筒状基 体の軸方向に締付圧力を付与する環状の第 2のパッキン押さえと、 他方のグラン ドパッキンの移動を抑制する環状の上部ストッパーにより構成されることが好ま しい。
本発明においては、 第 1のパッキン押さえの形状が、 一方のグランドパッキン を、 その先端部で直接に押圧する凸型形状であり、 下部ストッパーの形状が、 一 方のグランドパッキンと直接に接触するとともに、 第 1のパッキン押さえの凸型 形状と嵌合する凹型形状であり、 第 2のパッキン押さえの形状が、 他方のグラン ドパッキンを、 その先端部で直接に押圧する凸型形状であり、 かつ、 上部ストッ パーの形状が、 他方のグランドパッキンと直接に接触するとともに、 第 2のパッ キン押さえの凸型形状と嵌合し得る凹型形状であることが好ましい。
また、 本発明によれば、 多孔質セラミックスからなる軸方向に貫通孔を有する 筒状基体の少なくとも一方の表面上にガス分離膜が形成されてなるガス分離体を 備えたガス分離体固定構造体であって、 前記ガス分離体の両方の開口端部には、 環状金属部材が各々シール部材を介して固定されており、 各々の前記シール部材 がグランドパッキンであることを特徴とするガス分離体固定構造体が提供される 本発明においては、 環状金属部材が、 グランドパッキンに対して、 筒状基体の 軸方向に締付圧力を付与する環状パッキン押さえと、 グランドパッキンの移動を 抑制する環状ストッパーにより構成されることが好ましい。
本発明においては、 環状パッキン押さえの形状が、 グランドパッキンを、 その 先端部で直接に押圧する凸型形状であり、 かつ、 環状ストッパーの形状が、 ダラ ンドパッキンと直接に接触しするとともに、 環状パッキン押さえの凸型形状と嵌 合し得る凹型形状であることが好ましい。
本発明においては、 筒状基体が、 複数個の貫通孔を並列的に有することが好ま しい。
本発明においては、 グランドパッキンの使用温度範囲の最高値が 3 0 0 以上 であることが好ましく、 グランドパッキンの非酸化性雰囲気における使用温度範 囲の最高値が 3 5 0 以上であることが好ましく、 非酸化性雰囲気における使用 温度範囲の最高値が 6 0 0で以上であることが更に好ましい。
また、 本発明においては、 グランドパッキンの主成分が膨張黒鉛であることが 好ましく、 多孔質セラミックスがアルミナであることが好ましい。
更に、 本発明においては、 ガス分離膜が水素を選択的に透過する水素分離膜で あることが好ましく、 ガス分離膜がパラジウム又はパラジウムを含有する金属か ら構成されることが好ましい。
本発明においては、 蓋状金属部材及び Z又は環状金属部材の構成材料の熱膨張 係数が 1 0 X 1 0— 以下であることが好ましく、 更に、 蓋状金属部材及び Ζ 又は環状金属部材の構成材料がパーマロイであることが好ましい。
本発明のガス分離体固定構造体は 2 5 0〜 1 6 5 0での温度範囲で好適に使用 することができ、 3 0 0〜6 0 0 の温度範囲で更に好適に使用することができ る。 また、 被処理ガスの全圧が 0 . 1〜 1 O M P aとなる圧力範囲で好適に使用 することができる。
また、 本発明によれば、 圧力容器を備えたガス分離装置であって、 前述のいず れかのガス分離体固定構造体の環状金属部材が該圧力容器の内面に固定されてい ることを特徴とするガス分離装置が提供される。
なお、 本発明によれば、 流入孔から流入する被処理ガス中における特定のガス 成分を、 ガス分離膜を透過させて第一の流出孔から流出させるとともに、 非透過 ガスを第二の流出孔から流出させるガス分離装置であって、 前記流入孔、 前記第 一の流出孔及び前記第二の流出孔を有する容器の内部に、 前述のいずれかのガス 分離体固定構造体が固定されていることを特徴とするガス分離装置が提供される 本発明においては、 ガス分離体の膨張を吸収する緩衝手段を備えることが好ま しい。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明のガス分離体固定構造体の一実施態様を示す断面図である。 図 2は、 本発明のガス分離体固定構造体の別の実施態様を示す断面図である。 図 3 は、 本発明のガス分離体固定構造体の更に別の実施態様を示す断面図である。 図 4は、 本発明のガス分離装置の一実施態様を示す断面図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態について説明するが、 本発明は以下の実施の形態に 限定されるものではなく、 本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、 当業者の通常の知 識に基づいて、 適宜、 設計の変更、 改良等が加えられることが理解されるべきで ある。
本発明の第一の側面は、 多孔質セラミックスからなる軸方向に貫通孔を有する 筒状基体の少なくとも一方の表面上にガス分離膜が形成されてなるガス分離体を 備えたガス分離体固定構造体であり、 ガス分離体の一方の開口端部には蓋状金属 部材が、 他方の開口端部には環状金属部材が、 各々のシール部材を介して固定さ れているとともに、 各々のシール部材がグランドパッキンであることを特徴とす るものである。 また、 蓋状金属部材は一方のグランドパッキンに対して、 筒状基 体の軸方向に締付圧力を付与する蓋状又は環状の第 1のパッキン押さえと、 一方 のグランドパッキンの移動を抑制する環状又は蓋状の下部ストッパーにより構成 されるとともに、 環状金属部材は他方のグランドパッキンに対して、 筒状基体の 軸方向に締付圧力を付与する環状の第 2のパッキン押さえと、 他方のグランドパ ッキンの移動を抑制する環状の上部ストッパーにより構成されていることが好ま しい。 以下、 その詳細について説明する。
図 1は、 本発明のガス分離体固定構造体の一実施態様を示す断面図である。 蓋 状金属部材 1は、 蓋状の第 1のパッキン押さえ 2と、 環状の下部ストッパー 3に より構成されており、 環状金属部材 4は、 環状の第 2のパッキン押さえ 5と、 環 状の上部ストッパー 6により構成されている。 なお、 環状金属部材 4 (第 2のパ ッキン押さえ' 5 ) は、 貫通孔 7を有するフランジ 8と、 溶接等の気密性を確保す る接合方法により接合されている。
蓋状金属部材 1及び環状金属部材 4には、 ガス分離体 1 0の外周面と接するよ
うにグランドパッキン 1 1, 1 2がシール部材として配置されている。 このとき 、 グランドパッキン 1 1 , 1 2を各々少なくとも 1個収納可能なスタフイングポ ックス 1 3を備え、 この内部にグランドパッキン 1 1, 1 2を収納するように配 置してもよい。 但し、 グランドパッキン 1 1 , 1 2はガス分離体 1 0の外周面に 直に接することが必要である。
第 1のパッキン押さえ 2及び第 2のパッキン押さえ 5は、 グランドパッキン 1 1, 1 2に対して、 筒状基体 3 1の軸方向に締付圧力を付与することができ、 下 部ストッパー 3及び上部ストッパー 6は、 グランドパッキン 1 1, 1 2に対して 締付圧力が付与されることに伴う当該グランドパッキン 1 1 , 1 2の軸方向への 移動を抑制する。 このとき、 移動を抑制されたグランドパッキン 1 1 , 1 2は、 実際上は多少の変形を伴ってガス分離体 1 0の径の内部方向、 即ち、 ガス分離膜 3 0の膜面に対して垂直方向に適当な圧力で密着し、 ガス分離体 1 0と、 蓋状金 属部材 1及び環状金属部材 4との間の気密性を確保する。 なお、 スタフイングポ ックス 1 3により、 その内部に収納されたグランドパッキン 1 1, 1 2に付与さ れた締付圧力を、 ガス分離体 1 0へとより効果的に伝えることが可能となる。 また、 本発明においては、 部品数を少なくし、 かつ、 より気密性を確保しやす い等の観点から、 第 1のパッキン押さえ 2の形状が、 グランドパッキン 1 1を、 その先端部で直接に押圧する凸型形状であり、 下部ストッパー 3の形状が、 ダラ ンドパッキン 1 1と直接に接触するとともに、 第 1のパッキン押さえ 2の凸型形 状と嵌合する凹型形状であり、 第 2のパッキン押さえ 5の形状が、 グランドパッ キン 1 2を、 その先端部で直接に押圧する凸型形状であり、 かつ、 上部ストッパ 一 6の形状が、 グランドパッキン 1 2と直接に接触するとともに、 第 2のパツキ ン押さえ 5の凸型形状と嵌合し得る凹型形状であることが好ましい。
第 1のパッキン押さえ 2と下部ストッパー 3が接する部位、 及び、 第 2のパッ キン押さえ 5と上部ストッパー 6が接する部位には、 グランドパッキン 1 1 , 1 2への締付圧力を付与及び保持するため、 ねじ溝 2 0が形成されていてもよい。 また、 第 1のパッキン押さえ 2、 下部ストッパー 3、 第 2のパッキン押さえ 5、 及び上部ストッパー 6の外周部には、 レンチ等を用いてのねじ込みを容易にすべ く、 面取り部 2 1が形成されていてもよい。
図 2は、 本発明のガス分離体固定構造体の別の実施態様を示す断面図である。 蓋状金属部材 1は、 環状の第 1のパッキン押さえ 1 0 0と、 環状の下部ストッパ — 1 0 7により構成されており、 環状金属部材 4は、 環状の第 2のパッキン押さ え 5と、 環状の上部ストッパー 6により構成されている。 なお、 環状金属部材 4
(上部ストッパー 6 ) は、 貫通孔 7を有するフランジ 8と溶接等の接合方法によ り接合されている。 また、 その他の部材、 例えばグランドパッキン 1 1, 1 2、 スタフィングボックス 1 3等は図 1に示すガス分離体固定構造体の場合と同様の 位置関係で配置されており、 グランドパッキン 1 1, 1 2はガス分離体 1 0の外 周面に直に接している。
即ち、 本発明に係るガス分離体固定構造体においては、 環状の第 1のパッキン 押さえによりグランドパッキンに対して締付圧力を付与する方向は、 図 1、 2に 示すように筒状基体 3 1の軸方向であれば上下いずれの方向であってもよく、 目 的,用途等に応じて自在な設計が可能である。
次に、 本発明の第二の側面について説明する。 本発明の第二の側面は、 多孔質 セラミツクスからなる軸方向に貫通孔を有する筒状基体の少なくとも一方の表面 上にガス分離膜が形成されてなるガス分離体を備えたガス分離体固定構造体であ り、 ガス分離体の両方の開口端部には、 環状金属部材が各々シール部材を介して 圧縮固定されており、 各々のシール部材がグランドパッキンであることを特徴と するものである。 また、 環状金属部材は、 グランドパッキンに対して、 筒状基体 の軸方向に締付圧力を付与する環状パッキン押さえと、 グランドパッキンの移動 を抑制する環状ストッパーにより構成されることが好ましい。 以下、 その詳細に ついて説明する。
図 3は、 本発明のガス分離体固定構造体の更に別の実施態様を示す断面図であ る。 環状金属部材 4は、 環状パッキン押さえ 1 1 0 , 1 2 0と、 環状ストッパー 1 3 0 , 1 4 0により構成されており、 環状金属部材 4 (環状パッキン押さえ 1 1 0 , 1 2 0 ) は、 貫通孔 7を有するフランジ 8、 又は当該ガス分離体固定構造 体が取着される容器本体 1 0 4と溶接等の接合方法により接合されている。 環状金属部材 4には、 ガス分離体 1 0の外周面と接するようにグランドパツキ ン 1 1, 1 2がシール部材として配置されている。 このとき、 グランドパッキン
11, 12を各々少なくとも 1個収納可能なスタフイングボックス 13を備え、 この内部にグランドパッキン 1 1, 12を収納するように配置してもよい。 伹し 、 グランドパッキン 1 1, 12はガス分離体 10の外周面に直に接することが必 要である。
環状パッキン押さえ 1 10, 120は、 グランドパッキン 1 1, 12に対して 、 筒状基体 31の軸方向に締付圧力を付与することができ、 環状ストッパー 13 0, 140は、 グランドパッキン 1 1, 12に対して締付圧力が付与されること に伴う当該グランドパッキン 1 1, 12の軸方向への移動を抑制する。 このとき 、 移動を抑制されたグランドパッキン 1 1, 12は、 実際上は多少の変形を伴つ てガス分離体 10の径の内部方向、 即ち、 ガス分離膜 30の膜面に対して垂直方 向に適当な圧力で密着し、 ガス分離体 10と、 環状金属部材 4との間の気密性を 確保する。 なお、 ス夕フイングボックス 13により、 その内部に収納されたダラ ンドパッキン 1 1, 12に付与された締付圧力を、 ガス分離体 10へとより効果 的に伝えることが可能となる。
また、 本発明においては、 部品数を少なくし、 かつ、 より気密性を確保しやす い等の観点から、 環状パッキン押さえ 1 10, 120の形状が、 グランドパツキ ン 1 1, 12を、 その先端部で直接に押圧する凸型形状であり、 かつ、 環状スト ッパー 130, 140の形状が、 グランドパッキン 11, 12と直接に接触しす るとともに、 環状パッキン押さえ 1 10, 120の凸型形状と嵌合し得る凹型形 状であることが好ましい。
環状パッキン押さえ 1 10, 120と環状ストッパー 130, 140が接する 部位には、 グランドパッキン 11, 12への締付圧力を付与及び保持するため、 ねじ溝 20が形成されていてもよい。 また、 環状パッキン押さえ 110, 120 、 及び環状ストッパー 130, 140の外周部には、 レンチ等を用いてのねじ込 みを容易にすべく、 面取り部 21が形成されていてもよい。
既に述べたように、 図 3に示すガス分離体固定構造体の場合であっても環状パ ッキン押さえによりグランドパッキンに対して締付圧力を付与する方向は筒状基 体の軸方向であれば上下いずれの方向であってもよく、 目的 ·用途等に応じて自 在に設計することができる。
本発明のガス分離体固定構造体は、 ガラス接合、 ろう接合等を採用せず、 シ一 ル材としてのグランドパッキンを介してガス分離体を各金属部材に固定している ために、 熱膨張差に起因するガス分離体の破損等が生じ難く、 また、 ガス分離体 の実使用に際して温度が上昇した場合であっても気密性が充分に確保されるとと もに、 熱サイクルの負荷に対しても優れた耐久性を示す。 更には、 高温下におい てパッキン押さえ等の増し締め等を行なう必要性がなく、 保守 ·点検等の手間も 削減される。
また、 本発明においてはグランドパッキンの使用温度範囲の最高値が 3 0 0 V, 以上であることが好ましく、 3 5 O t:以上であることが更に好ましく、 4 5 0で 以上であることが特に好ましい。 水素原子等のガス分離膜における拡散速度を速 くするため、 高温で使用できることが好ましいためである。 なお、 本発明におい てはグランドパッキンの使用温度範囲の最高値の上限値について特に限定される ものではないが、 実質的な耐熱性等の観点からは、 概ね 1 6 5 0 以下のもので あればよい。
更に、 本発明においてはグランドパッキンの非酸化性雰囲気中における使用温 度範囲の最高値が 3 5 0 ^以上であることが好ましく、 4 5 0 以上であること が更に好ましく、 6 0 0で以上であることが特に好ましい。 なお、 本発明におい てはグランドパッキンの非酸化性雰囲気中における最高使用温度の上限値につい て特に限定されるものではないが、 実質的な耐熱性等の観点からは、 概ね 1 6 5 0で以下のものであればよい。
また、 本発明においては、 グランドパッキンの主成分が膨張黒鉛であることが 好ましい。 膨張黒鉛を主成分とするグランドパッキンは高耐熱性、 高耐圧性を示 すとともに優れた弾性体であるため、 これを用いた本発明のガス分離体固定構造 体はガス分離体と、 蓋状金属部材及び環状金属部材との間の気密性を充分に確保 することができ、 高温 ·高圧条件下において使用可能である。
なお、 膨張黒鉛以外に使用温度範囲の最高値が 3 0 0 eC以上となる耐熱性を示 すパッキンの材質としては、 石綿繊維、 金属繊維等を挙げることができるが、 石 綿繊維は人体に対する悪影響 (健康障害の発生等) が懸念されるために、 金属繊 維は圧縮固定されるガス分離膜表面に傷をつける恐れがあるために好ましくない
。 従って、 グランドパッキンの主成分を膨張黒鉛とすることにより、 これらの問 題が回避される。
本発明のガス分離体固定構造体を構成する部材の 1つである多孔質セラミック スからなる筒状基体は、 ガス分離膜単独では機械強度が弱いので、 ガス分離膜を 支持するものである。 ここでいう多孔質とは、 例えば、 三次元的に連続した多数 の微細な小孔を有することを意味するものであり、 その孔径は 0 . 0 0 3〜2 0 mが好ましく、 更に 0 . 0 0 5〜5 /z mが好ましい。 孔径が 0 . 0 0 3 m未 満ではガスが通過するときの抵抗が大きくなるからである。 一方、 孔径が 2 0 mを超えるとガス分離膜にピンホールが生じやすくなり、 好ましくない。
本発明においては筒状基体を構成する多孔質セラミツクスがアルミナであるこ とが好ましく、 被処理ガスが反応しないという効果を奏する。 また、 アルミナよ りなる多孔質の筒状基体は所望とする形状に、 容易に作製することができ、 例え ば、 特開昭 6 2 - 2 7 3 0 3 0号公報に記載する方法により作製することができ る。
本発明においては、 筒状基体が複数個の貫通孔を並列的に有することが好まし い。 但し、 筒状基体の形状は円柱状に限定されるものではなく、 例えば、 角柱状 であってもよく、 例えば円柱、 角柱がその軸に沿って湾曲した形状であってもよ い。 また、 貫通孔の形状は直線状のものに限定されるものではなく、 例えば曲線 状の形状であってもよい。
また、 本発明においてはガス分離膜が水素を選択的に透過する水素分離膜であ ることが好ましく、 このような選択透過性を示すガス分離膜を構成する金属とし ては、 パラジウム又はパラジウムを含有する金属が好ましい。 パラジウムを含有 する金属とは、 パラジウム単体と、 パラジウム合金とを包含する。 パラジウム合 金は、 Journal of Membrane Sc i ence, 56 (1 991) 315-325 : "Hydrogen Permeab l e Pa 1 l ad ium-S i lver Al l oy Membrane Suppor ted on Porous Cerami cs", 特開昭 6 3 - 2 9 5 4 0 2号公報に記載されているように、 パラジウム以外の金属の含量は 1 0〜3 0質量%であることが好ましい。 パラジウムを合金化する主目的は、 パ ラジウムの水素脆化防止と高温時の分離効率向上のためである。 また、 パラジゥ ム以外の金属として銀を含有することは、 パラジウムの水素脆化防止のため、 好
ましい。
なお、 ガス分離膜が被覆する面は、 筒状基体の外側でも、 内側でも、 或いはこ の両者でもよく、 ガス分離膜を筒状基体に被覆する方法は一般的な公知の方法が 使用でき、 例えば、 化学メツキ法、 真空蒸着法、 スパッタリング法等を用いるこ とができる。
本発明においては、 蓋状金属部材及び 又は環状金属部材の構成材料の使用温 度範囲内の熱膨張係数が 1 O X 1 0—6 で以下であることが好ましく、 9 X 1 0— 6ノ 以下であることが更に好ましく、 8 X 1 0— 6 1 C以下であることが特に好ま しい。 通常、 多孔質セラミックスからなる筒状基体の熱膨張係数は 1 0 X 1 0 _6 で以下であり、 グランドパッキンの応力値の変動制御、 及び筒状基体の破損防 止等の観点から、 筒状基体と、 蓋状金属部材及び Z又は環状金属部材の構成材料 の熱膨張係数は近似していることが好ましいためである。 従って、 蓋状金属部材 及び/又は環状金属部材の構成材料の熱膨張係数を当該数値以下とすることによ り、 高温条件下における被分離ガスのリーク発生や筒状基体の破損等を防止する ことができる。
なお、 本発明においては蓋状金属部材及び 又は環状金属部材の構成材料の熱 膨張係数の下限値については特に限定されるものではないが、 材料入手の容易性 等の観点からは概ね 0 . 4 X 1 0 _6Z :以上であれば問題なく用いることができ る。
また、 本発明における前述の熱膨張係数が 1 0 X 1 (Γ6/^以下である蓋状金 属部材及びノ又は環状金属部材として好適な構成材料金属の具体例として、 パー マロイ、 コバール、 インバ一、 スーパーインバー、 モリブデン、 タングステン、 鉄.ニッケル合金等を挙げることができ、 特にパーマロイであることが好ましく 、 このことにより、 高温条件下における被分離ガスのリーク発生や筒状基体の破 損等を効果的に防止することが可能である。
なお、 ガス分離体 1 0の外周側から内周側へと透過してきた分離ガスに、 ガス 分離体 1 0とグランドパッキン 1 1, 1 2のシール面から不可避的に侵入する極 微量の被処理ガス (分離されていないガス) が混在することになる (図 1 ) 。 但 し、 得られる分離ガスの用途を考慮した場合、 当該用途に影響を与えない程度の
混在率であれば極微量の被処理ガスの混在は許容されると考えられる。 例えば、 得られる分離ガスが水素ガスであって、 これを燃料電池用水素精製機として使用 することを想定した場合、 当該水素ガスの純度は 9 9体積%以上であれば充分に 許容され得る。
従って、 例えば蓋状金属部材 1及び環状金属部材 4の材質を S U S 3 0 4 (熱 膨張係数: 1 7 X l O—6Zt:) とした場合、 その熱膨張係数は多孔質セラミック スの 2〜 3倍であるため、 高温条件下においてはグランドパッキン 1 1, 1 2の 応力低下に伴って極微量の被 理ガスのリーク発生も予測されるが、 得られる分 離ガスの用途により本発明のガス分離体固定構造体は好適に採用される (図 1 ) 本発明のガス分離体固定構造体は、 その熱応力や熱サイクルに対する優れた耐 久性から、 2 5 0〜 1 6 5 O tの温度範囲で好適に使用することができ、 3 0 0 〜6 0 0 "Cの温度範囲で更に好適に使用することができる。 また、 被処理ガスの 全圧が 0 . 1〜 1 O M P aとなる圧力範囲で好適に使用することができる。 次に、 本発明の第三の側面について説明する。 本発明の第三の側面は圧力容器 を備えたガス分離装置であり、 上述してきたいずれかのガス分離体固定構造体の 一部である環状金属部材が、 圧力容器の内面に固定されていることを特徴とする ガス分離装置である。 以下、 その詳細について説明する。
図 1に示す構造のガス分離体固定構造体を組み込んだ場合を想定して説明する 。 環状金属部材 4、 更に具体的には第 2のパッキン押さえ 5の一部分が、 フラン ジ 8等に適当な接合方法、 例えば溶接等により接合されることによって、 ガス分 離装置の構成要素である圧力容器 (図示せず) の内面に固定される。 ガス分離体 1 0の一方の開口端部はグランドパッキン 1 1を介して蓋状金属部材 1によって 気密に閉じられているため、 ガス分離体 1 0を透過した分離ガスは、 環状金属部 材 4が固定されている開口端部 (貫通孔 7 ) の方向へと流れ、 圧力容器の外部に 取り出される。 なお、 被処理ガス中の他のガスはガス分離体を透過せず、 圧力容 器に設けられた出口 (図示せず) より排出される。
ここで、 本発明のガス分離装置では、 ガス分離体固定構造体が圧力容器の内面 に固定されている箇所はガス分離体固定構造体において、 貫通孔 7を有する一方
の端部のみであり、 蓋状金属部材 1、 即ち、 他方の端部は圧力容器の内面に固定 されていない (図 1 ) 。 従って、 熱サイクルの負荷に起因するガス分離体の膨張
•収縮による破損が極めて生じ難く、 長期間の使用が可能であるという効果を奏 する。
次に、 本発明の第四の側面について説明する。 本発明の第四の側面は、 流入孔 から流入する被処理ガス中における特定のガス成分を、 ガス分離膜を透過させて 第一の流出孔から流出させるとともに、 非透過ガスを第二の流出孔から流出させ るガス分離装置であり、 ガス分離体の両方の開口端部に環状金属部材が各々シー ル部材を介して固定されている、 これまで述べてきたいずれかのガス分離体固定 構造体が、 流入孔、 第一の流出孔及び第二の流出孔を有する容器の内部に固定さ れていることを特徴とするものである。 以下、 その詳細について説明する。 図 4は、 本発明のガス分離装置の一実施態様を示す断面図である。 図 4におい て、 流入孔 1 0 1より導入された被処理ガスは、 フランジ 8の貫通孔 7を介して 、 ガス分離体 1 0の一端よりその内部に入る。 分離ガスは、 ガス分離膜 3 0を選 択的に透過し、 ガス分離体 1 0の外部に出、 流出孔 1 0 2より流出する。 一方、 非透過ガスは、 ガス分離体 1 0の他端より、 流出孔 1 0 3を介して排出される。 なお、 図 4中、 符号 1 0 5は蓋体、 符号 1 0 6は固定部材を示す。
上述の如く、 被処理ガスをガス分離体の内部より導入する場合において、 ガス 分離体の一端より被処理ガスを導入し、 他端より非透過ガスを排出する場合には
、 ガス分離体をその一端において容器本体の内部に支持するとともに、 ガス分離 体の両端を容器本体の流出孔或いは流入孔と連通させることが必要となる。 従つ て、 ガス分離体と容器本体との熱膨張差によりガス分離装置が損傷したり、 ガス 分離体と容器本体の流出孔或いは流入孔を連結する構造が損傷を受ける可能性が ある。 本発明においてはガス分離体の膨張を吸収するような緩衝手段を備えるこ とが好ましく、 このことにより、 前述の事態が起こることを防ぐことができる。 具体的には、 図 4に示すように容器本体 1 0 4とガス分離体 1 0との熱膨張差 によりガス分離装置が損傷するのを防ぐために、 容器本体 1 0 4の外周面を蛇腹 状の形状とし、 ガス分離体 1 0の軸方向における伸張を許容する構造とすればよ い。 蛇腹部は透過ガスの圧力を受けるが、 透過ガスの圧力は、 一般に陰圧〜 0 .
2MP aと小さいため、 蛇腹が伸びるように作用する力は無視することができる また、 この他の方法として、 貫通孔と容器の流出孔或いは流入孔の連結に、 バ ネ状に巻いた、 弾性を有するパイプを用いる等の方法がある。
実施例
以下、 本発明を実施例により具体的に説明するが、 本発明はこれら実施例に限 定されるものではない。
(ガス分離体とガス分離体固定構造体)
ガス分離体には、 外径 10. 7mm、 内径 7. 5mm、 長さ 40mmの円筒形 状を有し、 小孔径が 0. 1 mであるアルミナ製の多孔質基体に、 厚さ 18 m の金属パラジウムがメツキされたものを用いた。 また、 ガス分離体固定構造体を 構成するグランドパッキンには膨張黒鉛製編組グランドパッキンを、 各金属部材 には 45パーマロイ製のものを用いた。 なお、 この多孔質基体の熱膨張係数は 7 . 1 X 10 -'/V, (40〜300 ) 、 7. 7X 10 -6/ ( 40〜 600 であり、 各金属部材の熱膨張係数は 7. 3 X 10-W (40〜300で) 、 9 . 9 X 10—6 1 (40〜6000 であった。
(ガス分離体固定構造体の製造)
図 1に示すような構成のガス分離体固定構造体を作製した。 まず、 スタフィン グボックス 13にグランドパッキン 1 1, 12を 2個ずつ収納し、 グランドパッ キン 1 1, 12に接触するまで第 1のパッキン押さえ 2及び第 2のパッキン押さ え 5を軽くねじ込み、 グランドパッキン 1 1, 12を仮固定した。 次に、 蓋状金 属部材 1及び環状金属部材 4に、 前述のガス分離体 10を挿入した。 このとき、 ガス分離体 10の開口端部がグランドパッキン 1 1, 12よりも深い位置となる まで挿入した。 その後、 第 1のパッキン押さえ 2及び第 2のパッキン押さえ 5を 、 トルクレンチを用いて、 軸方向への締付圧力が 20 MP a、 径の内部方向 (ガ ス分離膜の膜面に対して垂直方向) への締付圧力が約 1 OMP aとなるように締 め込むことにより、 ガス分離体固定構造体を製造した。
(気密試験)
前述のガス分離体固定構造体を、 金属ガスケットを介して圧力容器に固定する
ことにより、 気密試験を行なった。
気密試験は、 ガス分離体の被処理側 (外周側) に 0 . 9 M P aの圧力でァルゴ ンガスを導入 ·保持した状態で、 ガス分離体を室温から 6 0 O :まで加熱し、 次 いで、 室温まで冷却した。 この温度サイクルを 5回繰り返し、 室温 (2 5 ) 、 3 0 0 、 及び 6 0 0での各時点において、 分離ガス側 (内周側) に漏洩するァ ルゴンガスの流量を測定することにより行った。 結果を表 1に示す。
(考察)
許容されるシール部からのガス漏洩量 (シール部ガス漏洩許容量) は、 分離膜 の面積 ·水素透過量、 及び分離膜のピンホールからの被処理ガスの漏洩量等に依 存する。 これらの諸条件を勘案し、 3 0 0でにおけるシール部ガス漏洩許容量を 約 3 O m l /m i nと想定する。 このとき、 表 1に示す結果から明らかなように 、 本発明のガス分離体固定構造体は、 温度サイクルが経過してもアルゴンガスの 漏洩は極微量、 即ち、 前記シール部ガス漏洩許容量の 1 / 6 0 (数十分の一) 程 度に抑制されているとともに、 低温 (2 5 ) 域から高温 (6 0 0 °C) 域に至る まで、 充分な気密性が確保されていることが判明した。 従って、 本発明に係るガ ス分離固定構造体を用いれば、 ガスリークが少なく、 長期使用が可能なガス分離 装置を提供することができると考えられる。 産業上の利用可能性
以上説明したように、 本発明のガス分離体固定構造体は、 ガス分離体の開口端 部に所定の金属部材がグランドパッキンを介して固定されているため、 熱応力に よるガス分離体を構成する基体の破壊や、 熱サイクルの負荷によるガス分離体と
、 これを支持するための支持材である金属部材との間の気密性低下が起こり難い とともに、 高温条件下においても使用可能であるといった利点を有する。
また、 本発明のガス分離装置によれば、 上述のガス分離体固定構造体が所定の 状態で圧力容器の内面に固定されているため、 熱サイクルの負荷に起因するガス 分離体の膨張,収縮による破損が極めて生じ難く、 長期間の使用が可能である。