明細書
アンチトロンビン一 m液状製剤およびその安定化方法
分野
本発明は、 長期保存において安定なアンチトロンビン一 ΠΙ の液状製剤および アンチトロンビン一 III液状製剤の安定化方法に関する。
背景技術
アンチトロンビン一 III (以下、 AT— III という。 ) は血漿中に存在する α: グロブリンに属する糖蛋白質の一種で、 その分子量は 65.000〜68.000である。
ΑΤ-ΙΙΙ はプロテアーゼ阻害活性を有しており、 トロンビンの凝固活性に対す る強い阻害作用、 およびその他の血液凝固因子、 活性化 X因子、 活性化 IX因子な どに対する阻害作用をも有している。 その他、 プラスミンゃトリブシンに対する 阻害作用があることも報告されている。 これらの阻害作用は、 一般にへパリンの 共存下でより速やかに進行することが知られている。
このような薬理作用を有する AT— III は、 凝固異常亢進の補正、 具体的には 汎発性血管異常症 (D I C) の治療を目的として用いられるものである。 ところ で、 AT— III は溶解伏態では安定性が悪く、 重合化により静注投与における副 作用の原因ともなることから、 これまで凍結乾燥の態様で製剤化されていた。
—方、 液状製剤は、 乾燥製剤に比べると使用時における注射用蒸留水への溶解 の必要もなく簡便に投与でき、 また製造工程で凍結乾燥操作を必要とせず製造上 経済的であるなどの利点があるが、 上記の如く、 AT— ΠΙ は溶液状態では安定 性に劣ることから AT— III液状製剤の実用化は遅れていた。 僅かに試薬の分野 で、 AT— III をへパリンの共存下、 溶液状態で 4 eC 7日間保存可能であったこ とを確認したにすぎない (特開昭 55— 103463号) 。
発明の開示
本発明の目的は、 AT— III の溶液伏態での安定性を改善し、 長期保存が可能 で、 特に 4 'Cから室温での長期保存において安定であり、 かつ投与の簡易な AT -III 液状製剤を提供することである。 本発明の他の目的は、 AT— III液状製 剤の保存安定性を改善する方法を提供することである。
前述の如き従来技術における問題を解消するため本発明者らは、 溶液状態での
AT— III の安定化について広範な検討を試みてきたところ、 安定化剤として有 機酸もしくはその塩、 糖硫酸エステルまたは界面活性剤を配合することにより、 AT - III の溶液状態での安定性が著しく改善され、 長期保存においても AT - III が安定であることを見出した。 また本発明者らは、 AT— III が pH9〜10 の溶液中では安定化剤を添加せずとも極めて安定であることを見出した。 さらに このように調製した AT— ΙΠ液状製剤が、 臨床面でも薬理効果および安全性に おいて何ら問題のないことを見出し本発明を完成したものである。 特に、 AT— III は、 注射剤として好ましい pH範囲である pH7〜 8の溶液中では安定性が 悪いが、 安定化剤として上記化合物を配合することにより、 pH7〜8の溶液中 における AT— ΙΠ の安定性が著しく改善される。
すなわち本発明は、
(1) A T— 111 および有機酸もしくはその塩を含有することを特徵とする AT— II I の液状製剤、
(2) AT— ΙΠ および糖硫酸エステルを含有し、 pHが 7〜10であることを特徴 とする AT— III の液状製剤、
(3) pHが 9〜1 0であることを特徴とする AT— III の液状製剤、
(4) AT— III および界面活性剤を含有することを特徵とする AT— III の液状製 剤、
(5) A T— 11〖 液状製剤に安定化剤として有機酸もしくはその塩を添加することか らなる AT— III液伏製剤の保存安定化方法、
(6) AT— III 液状製剤に安定化剤として糖硫酸エステルを添加し、 pHを 7〜10 に調整することからなる A T— II I液状製剤の保存安定化方法、
(7) AT— III液状製剤を pH9〜l 0に調整することからなる AT— ΙΠ 液状製 剤の保存安定化方法、 並びに
(8〉AT— ΙΠ液状製剤に界面活性剤を添加することからなる AT— ίΠ液状製剤 の保存安定化方法に関する。
図面の簡単な説明
図 1は、 AT— III乾燥製剤を溶解して調製した水溶液中の AT— III の安定 性と本発明の液状製剤中の AT— III の安定性とを比較した実験例 3の結果を示 すグラフである。
1 :安定化剤無添加の AT - 11〖 乾燥製剤の水溶液の経時安定性。
2 :安定化剤として 1 wZv%クェン酸ナトリウムおよび 3wZv%ァスパラ ギン酸ナトリウムを配合した AT— ΙΠ溶液の経時安定性。
3 :安定化剤として 1 wZv%クェン酸ナトリゥムおよび 3w/v%酒石酸ナ トリウムを配合した AT— III溶液の経時安定性。
4 :安定化剤として 1 wZv%クェン酸ナトリゥムおよび 3wZv%DL—リ ンゴ酸ナトリウムを配合した AT— III溶液の経時安定性。
発明の詳細な説明
( I) AT— III について
本発明で使用される AT— Π〖 は、 ヒト由来のもので医薬として使用できる程 度に精製されたものであれば特に制限されるものではなく、 例えばヒトの全血、 血漿、 血清または凝固した血液から圧搾された血清などから精製することができ る。 使用される血液としては、 特に HBs抗原、 抗 H I V抗体に対して陰性であ り、 G TPが正常値の 2倍以下であるものが好ましい。
血液, 血漿からの AT— III の精製法としては、 例えば特開昭 48 - 3501 7号公報 (米国特許 3842061号) 、 特公昭 59 - 7693号公報 (米国特 許 4340589号) 、 特開平 1一 275600号公報 (EP 33991 9 )、 EP 551084に開示の方法等が例示される。
例えば、 血漿からクリオプリシビテ一トを除去した上淸の低温エタノール画分 IV— 1、 画分 IVまたは画分 II + III を、 更にへパリンァフィ二ティークロマトグ ラフィ一などの操作を経て精製する方法などが挙げられる。
また、 細胞培養法 〔例えば、 特表昭 57 - 500768号公報 (EP531 6 5 ) 参照〕 、 遺伝子工学法 〔例えば、 特開昭 58— 162529号公報 (E P 9 0505 )参照〕 などにより調製される AT— III も使用できる。
(II) AT-III の液状製剤
本発明 (1)の A T— I I I 液状製剤は、 A T— II I および有機酸もしくはその塩を 含有してなる液状製剤であり、 好ましくは有機酸が二塩基酸またはクェン酸であ る液状製剤である。 より好ましくは、 A T— II I 、 二塩基酸もしくはその塩、 お よびクェン酸もしくはその塩を含有してなる液状製剤である。
本発明において有機酸とは、 分子内に少なくとも 1個、 好ましくは 1〜3個の カルボキシル基 (一 C O O H) を有する化合物をいう。 一塩基酸、 二塩基酸、 三 塩基酸とは、 それぞれカルボキシル基を 1、 2または 3個有する化合物をいう。 本発明で使用される有機酸は、 脂肪族または芳香族、 飽和または不飽和、 一塩 基酸 (モノカルボン酸) 、 二塩基酸 (ジカルボン酸) または三塩基酸 (トリカル ボン酸〉 のいずれでもよい。 好ましくは炭素數 2〜1 0、 より好ましくは炭素数 2〜6のものが挙げられる。 一塩基酸としては、 酢酸、 プロピオン酸、 酪酸、 吉 草酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸、 グリシン、 ァラニン、 ノ リン、 ロイシン、 イソロイシンなどの一塩基酸のアミノ酸が例示される。 二塩基酸としては、 シュ ゥ酸、 マロン酸、 コハク酸、 グルタル酸、 アジピン酸などの飽和脂肪族ジカルボ ン酸、 マレイン酸、 フマル酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、 フタル酸などの 芳香族ジカルボン酸、 ァスパラギン酸、 グルタミン酸などの二塩基酸のアミノ酸、 リンゴ酸、 酒石酸などの二塩基酸のヒドロキシ酸が例示される。 三塩基酸として は、 クェン酸などの三塩基酸のヒドロキシ酸が例示される。 好ましくは、 リンゴ 酸、 酒石酸、 マレイン酸、 ァスパラギン酸、 クェン酸である。
さらに、 かかる有機酸は塩の態様をしていてもよい。 有機酸の塩としては、 例 えばナトリウム塩、 カリウム塩等のアルカリ金属塩、 カルシウム塩等のアルカリ 土類金属塩、 アンモニゥム塩等の有機塩等が例示される。 好ましくは、 ナトリウ ム塩でめる。
本発明で使用される有機酸塩として、 より好ましくはリンゴ酸ナトリウム、 ク ェン酸ナトリウムである。
有機酸としては、 二塩基酸もしくはその塩とクェン酸もしくはその塩とを組合 わせて使用することが好ましい。 より好ましくは、'二塩基酸もしくはその塩とク ェン酸塩の組合せである。 クェン酸塩としては、 例えばクェン酸のナトリウム塩、
カリウム塩等のアルカリ金属塩、 クェン酸のマグネシウム塩、 カルシウム塩等の アル力リ土類金属塩が挙げられる。 好ましくは、 クェン酸ナトリゥ厶である。 本発明 (1)の液状製剤の ρΗは通常 pH6〜l 0、 好ましくは pH7〜9であり、 より一層好ましくは pH了〜 8である。 pH7〜8の製剤は、 注射時の疼痛が緩 和されるので、 注射剤として使用するのに適している。
本発明 (1)の製剤は、 pH6〜l 0において安定な AT— III 液状製剤であり、 就中 pH7〜8においてさえも長期保存に安定であることを特徴とする AT—III 液状製剤である。
pHの調整は通常の方法で行うことができ、 例えば調整剤として水酸化物また は適当な緩衝液などを用いて行ってもよい。 水酸化物としては水酸化ナトリウム、 水酸化カリウム等が例示される。 緩街液としてはリン酸塩緩衝液、 重炭酸塩緩衝 液、 トリス緩衝液等が例示される。
本発明 (1)の AT - III液状製剤は、 AT— ΙΠ を通常 1〜1000単位 Zm 1、 好ましくは 1〜200単位 Zml、 より好ましくは 25〜1 00単位/ mlの割 合で含有するものである。 本明細書において AT— III 1単位とは、 正常人血漿 lml中に含まれる AT— III量に相当する AT— III の量をいう。
液状製剤に配合される有機酸もしくはその塩の氇度は、 それら総量として、 通 常 0. 1〜10wZv%、 好ましくは l〜5wZv%、 より好ましくは l〜3w /v%である。 有機酸として、 二塩基酸もしくはその塩、 およびクェン酸もしく はその塩を配合する場合、 二塩基酸もしくはその塩の濃度は、 好ましくは 1〜 5 /v%, より好ましくは l〜3w/v%であり、 クェン酸もしくはその塩の濃 度は、 好ましくは 0. 5〜5wZv%、 より好ましくは l〜3wZv%である。 本発明 (2)の AT— III液状製剤は、 AT - III および糖硫酸エステルを含有し、 pHが?〜 10であることを特徵とする。
糖硫酸エステルとしては、 へパリン、 デキストラン硫酸等が例示され、 好まし くはへパリンである。
本発明 (2)の AT— III液状製剤は、 AT— III 1〜1000単位 Zml、 好まし くは 10〜100単位 Zmlおよびへパリン 1〜1000単位 Zml、 好ましくは 10
〜1 00単位 Zmlを含有する。 両者の組成比としては AT— III 1単位当たりへ ノ、'リン 0. 1〜1 00単位、 好ましくは 1〜5単位が例示される。
本発明 (2)の液状製剤の pHとしては、 了〜 1 0、 好ましくは 8〜1 0が例示さ れる。 pH8〜l 0の製剤は、 AT— III の溶液中での保存安定性に優れる点で 好ましい。 p Hの調整は通常の方法で行うことができ、 例えば上記発明 (1)の製剤 と同様に水酸化物または緩衝液を用いて行なうことができる。
本発明 (2)の製剤には、 さらに安定化剤として上記発明 (1)の製剤で使用する有機 酸またはその塩を配合してもよい。 有機酸またはその塩の配合量は上記発明 (1)の 製剤の説明を参照すればよい。
本発明 (3)の AT— III 液状製剤は pHが 9〜1 0であることを特徵とする。 好 ましくは pH9. 3〜9. 8である。
pHの調整は通常の方法で行うことができ、 例えば上記発明 (1)の製剤と同様に 水酸化物または緩衝液を用いて行うことができる。
本発明 (3)の AT— III 液状製剤は、 ΑΤ— ΙΠ を通常 1〜1 000単位 Zml、 好ましくは 1〜200単位 Zm 1、 より好ましくは 25〜1 00単位 Zm 1の割 合で含有するものである。
本発明 (3)の液状製剤は、 安定化剤の存在なくしても、 長期保存において安定な 製剤であるが、 さらに安定化剤として上記発明 (1)の製剤で使用する有機酸または その塩 (例えばクェン酸、 クェン酸塩、 アミノ酸) を配合してもよい。 有機酸ま たはその塩の配合量は上記発明 (1)の製剤の説明を参照すればよい。
本発明 (4)の液状製剤は、 AT— III および界面活性剤を含有することを特徴と する。 界面活性剤の添加により、 保存中の不溶性異物の発生を防止することがで さる。
界面活性剤としては、 非イオン系界面活性剤が好ましく、 例えばポリオキシェ チレンソルビタン脂肪酸エステル (例えば商品名 : トウィーン) 、 ポリオキシェ チレン一ポリオキシプロピレン共重合体 (例えば商品名:ブルロニック) 、 ボリ アルキレングリコール (例えば、 ボリエチレングリコール、 ポリプロピレングリ コール等) 、 ポリオキシエチレンアルキルエーテル (例えば商品名 : トリ トン)
等が例示される。 これらの界面活性剤の分子量は 2 , 0 0 0〜2 0 , 0 0 0が好 ましい。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、 ステ アリン酸、 パルミチン酸、 ミリスチン酸、 ラウリン酸、 ォレイン酸等の炭素数 12 〜18の脂肪酸が挙げられる。
好ましくは、 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、 ポリオキシェチ レン—ポリオキシブ αピレン共重合体を使用する。
本発明 (4)の AT— I I I 液状製剤は、 A T— III を通常 1〜 1 0 0 0単位 Zm 1、 好ましくは 1〜2 0 0単位 Zmし より好ましくは 2 5〜1 0 0単位 Zm lの割 合で含有する。 界面活性剤の濃度は通常 0 . 0 l〜l wノ v %、 好ましくは 0. 01 〜0 . l w//v %、 より好ましくは 0 . 0 2〜0 . 0 5 wノ v %である。
本発明の液状製剤の浸透圧は、 ヒトおよび動物の生理的条件と同じかもしくは それに近いことが好ましい。
本発明の液状製剤には、 本発明の目的に反しない限り AT— II I 以外の薬効成 分を配合することができる。
また本発明の液状液剤には、 本発明の目的に反しない限り、 通常液状製剤に用 いられる添加剤、 例えば等張化剤 (ソルビトール、 マンニトール、 グリセリン、 ボリエチレングリコール、 プロピレングリコール、 グルコース、 塩化ナトリウム 等) 、 防腐殺菌剤 (塩化ベンザルコニゥ厶、 パラォキシ安息香酸エステル類、 ベ ンジルアルコール、 パラクロルメタキセノール、 クロルクレゾ一ル、 フエネチル アルコール、 ソルビン酸またはその塩、 チメロサール、 クロロブ夕ノール等) 、 キレート剤 (ェデト酸ナトリウム、 縮合リン酸ナトリウム等) 、 粘稠剤 (ボリビ ニルピロリ ドン、 メチルセルロース、 カルボキシメチルセルロースナトリウム、 ヒドロキシブ口ピルセルロース、 ポリビニルアルコール、 ボリアクリル酸ナトリ ゥム等) 等を通常使用される添加量で配合することが出来る。
本発明の液状製剤には、 さらに補助安定化剤として糖を添加してもよい。 本発 明で使用される糖としては、 例えば単糖類、 二糖類、 糖アルコール、 アミノ糖等 が挙げられる。 単糖類としてはグルコース、 フルクトース、 ガラクト一ス、 マン ノース、 ァラビノース、 イノシトール等が、 二糖類としてはサッカロース、 ラタ
ト一ス、 マルトース等が、 また糖アルコールとしてはマンニトール、 ソルビトー ル、 キシリ トール等が例示される。 またアミノ糖としては、 グルコサミンおよび アミノ糖誘導体である N—ァセチルー D—グルコサミンなどが例示される。
好ましくは、 サッカロー'ス、 ラクト一ス、 ソルビトール、 イノシトール、 マル ト一ス、 N—ァセチルー D—グルコサミン、 マンニトールである。
糖を配合する場合、 その濃度は通常 0. 1〜40wZv%、 好ましくは 0. 5 〜20wZv%、 より好ましくは 5〜1 0wZv%である。
本発明 (1)〜 )の液状製剤には、 補助安定化剤として界面活性剤をさらに添加し てもよい。 界面活性剤の添加により、 保存中の不溶製異物の発生を防止すること ができる。 界面活性剤としては、 非イオン系界面活性剤が好ましく、 例えばポリ ォキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル (例えば商品名: トウイーン) 、 ボリ ォキシエチレン一ポリオキジプロピレン共重合体 (例えば商品名:プル口ニック). ポリアルキレングリコール (例えば、 ポリエチレングリコ一ル、 ボリプロピレン グリコール等) 、 ポリオキシエチレンアルキルエーテル (例えば商品名: トリ ト ン) 等が例示される。 これらの界面活性剤の分子量は 2, 000〜20, 000 が好ましい。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、 ステアリン酸、 ノ、'ルミチン酸、 ミリスチン酸、 ラウリン酸、 ォレイン酸等の炭素 数 1 2〜1 8の脂肪酸が挙げられる。
界面活性剤を配合する場合、 その濃度は通常 0. 0 l〜lwZv%、 好ましく は 0. 0 1〜 1 wZv%、 より好ましくは 0. 02〜0. 05wZv%であ る o
また、 本発明の液状製剤には、 さらにその他の安定化剤を配合することもでき る。 例えば、 無機塩、 アルブミン、 アブロチニン、 エチレンジアミン四酢酸 (E DTA) またはその塩などが挙げられる。
無機塩としては特に限定されないが、 塩化ナトリウム、 塩化力リウム、 リン酸 水素ニナトリウム、 リン酸二水素ナトリウム、 リン酸ナトリウム、 リン酸水素二 カリウム、 リン酸二水素カリウム、 リン酸カリウム等が例示される。
本発明の液状製剤としては、 AT— III が他の成分と共に水中に溶解された態
様であれば特に制限されるものではなく、 例えば注射剤、 点滴剤などの態様のも のが例示される。 溶解させる水としては、 例えば注射用蒸留水、 滅菌精製水等が 例示される。
本発明の液状製剤は、 液剤の種類に応じ、 自体既知の手段を用いて調製するこ とができる。 また所望により加熱処理、 除菌濾過などの処理を施すことができる。 このようにして調製された本発明液状製剤は、 通常 4で〜室温において長期保 存が可能である。 通常 1 0 'C以下で少なくとも 2年間、 室温で少なくとも 6力月 間の保存が可能である。 好ましくは 1 O 'C以下での保存である。
本発明の AT— II I 液伏製剤は、 通常 2 5でで少なくとも 6力月間、 より好ま しくは 4でで少なくとも 3年間保存した後でも、 製剤調製時における A T— 111 活性の少なくとも 8 0 %、 好ましくは 9 0 %以上保持する。
本発明の液状製剤は、 先天性 AT - ΙΠ 欠乏に起因する血栓形成傾向および A T一 I I I 低下を伴う汎発性血管内凝固症候群 (D I C) の治療に有用である。 本剤の投与方法は、 従来の AT— I I I 注射剤もしくは点滴剤の処方に準じるこ とができ、 例えば、 本発明液状製剤を緩徐に静注もしくは点滴静注する方法が挙 げられる。
通常、 本発明製剤は 1日 1 , 0 0 0〜3 , 0 0 0単位 (又 2 0〜6 0単位 Zkg) の割合で投与されるが、 かかる投与棗は年齢、 体重、 症状などにより適宜増減し てもよい。
なお、 産科的、 外科的 D I Cなどで緊急処置として本剤を使用する場合は、 1 日 1回 4 0〜6 0単位/ k gを投与することが好ましい。
発明の効果
A T— I U と安定化剤 (有機酸もしくはその塩、 糖硫酸エステルまたは界面活 性剤) を配合してなる本発明の AT— ΙΠ 液状製剤によれば、 加熱処理時および 長期保存時における AT— I I I 活性の低下、 重合化を防止することができる。
また本発明によれば、 従来製剤では AT— I II の活性維持が困難であった p H 7〜8においてさえも、 長期にわたり液伏のままで AT— II I を安定に維持する ことができる。
さらに pH9〜l 0の範囲にある本発明の AT— III液状製剤によれば、 安定 化剤の存在なくしても加熱処理時および長期保存時における AT - III 活性の低 下、 重合化を防止することができる。
本発明の製剤は、 長期保存においても AT— III を安定に保持する液状製剤で ある。 このため、 本発明の液状製剤はそのまま商品 (注射剤など) として提供す ることができる。 従って、 使用に際して用時溶解することなく、 そのまま注射剤 等として患者に投与することができるため、 投与時の操作が簡略化でき臨床使用 上有用である。 また製造工程において、 凍結乾燥工程を省くことができるため、 製造の効率化、 および経済化を図ることができる。
実施例
次に、 実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、 本発明はこれら実施 例に限定されるものでなレ、。
実施例 1
AT— III 500単位、 リンゴ酸ナトリウム 250m g、 クェン酸ナトリウム 5 Omgを注射用水 5m 1に溶解し、 pHを 7. 5に調整して AT— III 液状製 剤とした。
実施例 2
AT— III 500単位、 酒石酸ナトリウム 25 Omg. クェン酸ナトリウム 50 mgを注射用水 5 mlに溶解し、 pHを 7. 5に調整して AT— III液状製剤と した。
実施例 3
AT— IU 500単位、 ァスパラギン酸ナトリウム 25 Omg. クェン酸ナト リウム 5 Omgを注射用水 5mlに溶解し、 pHを 7. 5に調整して AT— III 液状製剤とした。
実施例 4
AT— III 500単位、 ァスパラギン酸ナトリウム 25 Omgを注射用水 5ral に溶解し、 pHを 7. 5に調整して AT— III液状製剤とした。
実施例 5
AT- III 500単位、 リンゴ酸ナトリウム 250 mg、 ソルビトール 1 50 mgを注射用水 5m 1に溶解し、 pHを 8. 0に調整して AT— III液状製剤と した。
実施例 6
AT— III 500単位、 リンゴ酸ナトリウム 25 Omg、 ソルビトール 250 m , クェン酸ナトリウム 5 Omgを注射用水 5m 1に溶解し、 pHを 7. 0に 調整して AT— ΙΠ液状製剤とした。
実施例 7
AT -【II (乾燥製剤、 商品名ノィアート、 ミ ドリ十字社製) 500単位およ びへパリン 1000単位を適量の注射用水に溶解して全量を 2 Omlとした。 pH を 8に調整して AT— III液状製剤とした。
実施例 8
AT— III 500単位、 塩化ナトリウム 5 Omg. クェン酸ナトリウム 52mg、 マンニトール 20 Omgおよびへパリン 500単位を注射用水 2 Om 1に溶解し、 pHを 8に調整して AT— III液状製剤とした。
実施例 9
AT-III (乾燥製剤、 商品名ノィアート、 ミ ドリ十字社製) 500単位を注 射用蒸留水 2 Om 1に溶解して、 pHを 9に調整して AT— III液状製剤とした。 実施例 1 0
AT— III (乾燥製剤、 商品名ノィアート、 ミ ドリ十字社製) 500単位を注 射用蒸留水 2 Omlに溶解して、 pHを 10に調整して AT— III液状製剤とし た。
実施例 1 1
AT - III (乾燥製剤、 商品名ノィアート、 ミ ドリ十字社製) 500単位、 サ ッカロ一ス 20 Omgを注射用水 1 Omlに溶解して、 pHを 9. 3に調整して AT— III 液状製剤とした。
実施例 1 2
AT— III (乾燥製剤、 商品名ノィアート、 ミ ドリ十字社製) 500単位、 マ
ンニトール 5 Omg、 クェン酸ナトリウム 5 Omgを注射用水 1 0mlに溶解し て、 pHを 9. 8に調整して AT— III液状製剤とした。
実施例 1 3
AT— III 500単位、 クェン酸ナトリウム 25 Omgを注射用水 5mlに溶 解して、 pHを 7. 5に調整して AT— ΠΙ液状製剤とした。
実施例 14
AT— III 500単位、 クェン酸ナトリウム 250mg、 サッカロース 500 mgを注射用水 5 m 1に溶解して、 pHを 7. 5に調整して AT— III 液状製剤 とした。
実施例 15
AT— III 500単位、 クェン酸ナトリウム 25 Omg, ボリォキシエチレン 一ポリオキシプロピレン共重合体 (商品名プル口ニック PF 68) 2mgを注射 用水 5mlに溶解して、 pHを 7. 5に調整して AT— III液状製剤とした。 実施例 1 6
AT— III 500単位、 リンゴ酸ナトリウム 150mg、 クェン酸 150mg、 サッカロース 25 Omg、 ポリオキシエチレン一ポリオキシプロピレン共重合体 (商品名ブル口ニック PF 68) 0. 5mgを注射用水 5m 1に溶解して、 pH を 7. 5に調整して AT— III液状製剤とした。
以下の実験例において、 本発明の AT— III液状製剤中の AT— III の安定性 調べた。
なお、 AT— III の安定性は、 残存する AT— ΠΙ活性および Zまたは AT— III の重合化の割合から評価した。 なお、 以下に述べるように、 AT— III 活性 は ΑΤ— ΠΙ 活性測定キット (テストチーム AT— III · 2キッ ト :第一化学薬 品製) を用いて測定し、 AT— III の重合化の割合は HPLC (高速液体クロマ トグラフィー) 分析によって測定した。
(1) AT— III活性の測定
検体希釈液 50 // 1 C2. 4U mlへパリン, 40 mM トリスー塩酸緩衝 液, 0. 14M NaC 1, 10 mM EDTA (pH8. 4) 中〕 をチューブ
に採り、 ヒトトロンビン溶液 〔0. 9%塩化ナトリウム、 0. 05%ゥシ血清ァ ルブミン (BSA) , 0. 05 %ポリエチレングリコール (PEG) 6000中、 1 U ml トロンビン含有) 100// 1を加え、 37でで 5分間ブレインキュベ一 トした後、 合成基質液 (S— 2238 : HD—フエ二ルァラ二ルー Lーピペコリ ルー L一アルギニル— p—二トロアニリ ド '二塩酸塩) 1 00〃 1を加え、 さら に 37でで 5分間インキュベートした。 発色後、 クェン酸溶液を lml加えて反 応を停止させ、 分光光度計で波長 405 nmの吸光度を測定した。 測定検体と同 時に正常ヒト血漿 (1U AT— III Zml)を測定し、 その検量線から検体の AT— III含量を測定した。
(2) HPLC分析
G3, 000 SWXLカラム (東ソ一社製) を 0. 3M NaC l加 0. 05M リン酸塩緩衝液 ( p H 7. 0 )で平衡化した後、 流速 0. 7ml Z分で測定を行 た 0
実験例 1
ΑΤ— ΙΠ溶液 (AT— III力価: 80. 4 UZm 1、 0. 5%クェン酸ナト リウム緩衝液、 pH7. 5、 8. 0、 8. 5または 9. 0) に 5wZv%ァスパ ラギン酸ナトリゥムおよび 1 wZv%クェン酸ナトリゥムを配合して、 pH7.5 〜9. 0で 55°Cで 30分間加熱処理を行い、 AT— III活性の残存率を測定し た。 結果を表 1に示す。 表中コントロールは加熱処理前の試料をさし、 その AT 一 III活性 (力価) 70. SUZmlを 100%として各試料中の AT— III活 性の残存率を求めた。
表 1
安定化剤 (5 ¥%ァスパラギン酸ナトリウム及び
1 wZv%クェン酸ナトリウム) と pH条件との関係
pH7. 5〜9で AT— III 活性は 99. 9 %以上の残存率を示し、 いずれも 女疋 めつ Τ:ο
実験例 2
各種安定化剤 (ァスパラギン酸ナトリウム、 グルタミン酸ナトリウム、 酒石酸 ナトリウム、 DL—リンゴ酸ナトリウム) を 3w/v%もしくは 5w/v%配合 する AT— III溶液 (AT— III力価: 80. 4 UZm 1、 pH7. 5) を調製 し、 それぞれについて 55て、 1〜10時間加熱における AT— III の安定性を 経時的に測定して、 比較検討を行った。 結果を表 2に示す。
表 2
精製 AT— III 溶液 ( 1. 0%クェン酸ナトリウム、 pH7. 5 AT— III 力価: 8 5. 9 U/m l ) に了スパラギン酸ナトリウム、 酒石酸ナトリゥム、 D L—リンゴ酸ナトリウムをそれぞれ 3 w/v%ずつ配合して、 それぞれについて
55°C、 1〜1 0時間加熱における AT— III の安定性を経時的に測定して、 比 較検討を行った。 また比較対照として市販の AT— III 乾燥製剤の水溶液 (0.25 %塩化ナ ト リウム, 0. 26%クェン酸ナトリウム, 1%マンニトール) につい て同様に AT— III の安定性を調べた。 結果を表 3および図 1に示す。
表 3 女疋化剤 加熟時 Γ 残存力価 残存率
(U/ml) (½) 添加 lOiDin 5 l . g 6 ο . β
AT - 111乾燥製剤 20min 33: 5 3 9. 0
溶液 30rain 25. 3 2 9. 5
1 h 1 5. 3 1 7. 8
3 h 5. 8 6. 8
5 h - l . 3 0
1%クェン酸 Na- 1 h 59. 5 6 9. 3
3%了スパラギン酸 Na 3 h 52. 0 6 0. 6
5 h 52. 6 6 1. 2
1 0 h 26. 3 3 0. 6
1%クェン酸 Na- 1 h 71. 7 8 3. 5
3酒石酸 Na 3 h 75. 6 8 8. 0
5 h 69. 5 8 0. 9
1 0 h 62. 0 7 2. 2
1%クェン酸 Na- 1 h 84. 7 9 8. 6
3¾リ ンゴ酸 Na 3 h 83. 3 9 7. 0
5 h 77. 2 8 9, 9
1 0 h 71. 4 8 3. 1 非加熱 85. 9 1 0 0
AT— III 乾燥製剤の水溶液では、 AT - III は 55eC、 1時間の加熱で 1 8 %まで失活するのに対して、 安定化剤を配合した溶液では、 AT— III 活性が約 70〜1 00%も残存していた。 特に 1 wZv%クェン酸ナトリウ厶および 3w Zv%DL—リンゴ酸ナトリウムを配合した場合は、 55で、 1 0時間加熱にお いても AT— III 活性が 80%以上も残存しており、 従来品 (乾燥製剤) の水溶 液) より約 60倍以上も安定化効果が高まっていた。
実験例 4
AT— III 溶液 (AT— III 力価: 1 1 3. 4 Uノ m 1 ) にリンゴ酸ナトリウ ム、 クェン酸ナトリウムおよび各種の糖を配合したものを、 pH7. 5に調整し て 5 5°Cで 1 0時間の加熱処理を行い、 加熱処理後の AT— ΠΙ 活性の残存率を 測定することにより、 糖の併用効果を調べた。 結果を表 4に示す。 加熱処理前の 試料の AT— ΙίΙ 活性 (力価) 1 1 3. 4 UZm lを 1 0 0%として各試料中の AT— III 活性の残存率を求めた。
表 4 安定化剤 残存力価 残存率
(U/m 1 ) (%)
1%リンゴ 酸 Na- 5¾クェン ^Na- 10¾サ ス 104.2 91.9
2%リンゴ 翻 a- 5 ン 酸 Na- 10¾サ 7力 π-ス 93.6 82.5
3¾リンゴ酸 Na- 5%クェン 酸 Na- 10¾ 力 π-ス 99.4 87.6
3%リンゴ酸 Na- 3%クェン酸 Na- 10¾サ,力 π-ス 103.4 91.2
4%リンゴ 酸 Na- 3%クェン 酸 Na- 10¾サ,力 ϋ-ス 113.1 99.7
5%リンゴ 酸 Na- 3%クェン 酸 Na- 10¾サ,力 π-ス 112.9 99.5
3 リンゴ酸 Na- 3 クェ 'ノ酸 Na- 10¾ソルビト-ル 109.2 96.3
10¾マン/ -ス 83.0 73.2
〃 10¾フルク卜ス 73.2 64.5
10¾グルコース 97.4 85.9
〃 10¾ラクト-ス 105.2 92.8
〃 10¾ィ ント-ル 109.7 96.7
〃 10¾マルト-ス 105.2 92.8
10¾ 7ンニト-ル 110.2 97.2 実験例 5
AT— III 溶液 (AT— III 力価: 8 5, 9 U/m 1 , H7. 5) に 0. 5
wZv%クェン酸ナトリゥムおよび各種安定化剤 (ァスパラギン酸ナトリウ厶, グルタミン酸ナトリウム, 酒石酸ナトリウム、 DL—リンゴ酸ナトリウム、 グリ シンまたは酢酸ナトリウム) を添加し、 それぞれを 5 5でで 1〜1 0時間加熱処 理した。 各種安定化剤および 0. 5wZv%クェン酸ナトリウムの AT— III に 対する安定化効果を H PLC分析を用いて重合物の生成度を測定することによつ て調べた。 結果を表 5に示す。
なお、 表中の記号は生成した重合物の含量が、 ◎:重合物 2 %未満、 〇:重合 物 2〜5 %、 ▲:重合物 5〜1 0%、 :重合物 1 0%以上であったことを示す c 表 5 安定化剤 加熱時間 (h)
1 3 5 1 0
5¾了スパラギン酸 Na— 0.5 クェン酸 Na ◎ 〇 〇 〇
5¾ダル夕ミン酸 Na - 0.5%クェン酸 Na 〇 〇 〇 〇
5%酒石酸 Na - 0.5 クェン酸 Na ◎ ◎ ◎ 〇
3¾ DL-リンゴ酸 Na— 0.5%クェン酸 Na ◎ 〇 〇 〇
5% DL-リンゴ酸 Na— 0.5%クェン酸 Na ◎ ◎ ◎ ◎
5¾グリシン —0.5 クェン酸 Na ▲ X
3¾酢酸 Na -0.5¾クェン酸 Na 〇 ▲ X
非加熱 ◎ 安定化剤として二塩基酸とクェン酸とを組合わせて使用した場合、 A T— 111 の重合化が抑制され、 高い安定化効果が認められた。
実験例 6
pH7. 5の AT— III 溶液に安定化剤として 3wZv%了スパラギン酸ナト リウム、 3 wZv%酒石酸ナトリゥムまたは 3w/v%Uンゴ酸ナトリゥムを配 合した検体を調製して、 それぞれ 55'Cで 1〜1 0時間加熱処理した後、 AT— III 力価の残存量を調べた。
その結果、 安定化剤無添加の AT— III溶液に比して、 3wZv%リンゴ酸ナ トリウム、 3 wZv%酒石酸ナトリウム、 3 wZv%ァスパラギン酸ナトリウム の順で高い A丁 -III に対する安定化効果が認められた。
実験例 7
AT— III溶液 (AT— III力価: 125. 1 U, pH7. 5) にリンゴ酸ナ トリウムおよび各種安定化剤 (グリシン、 ソルビトール、 クェン酸ナトリウム) を添加した検体 (表 6参照) を作成して、 それぞれ 25 'Cで 6か月間保存した。
6か月後、 検体中の AT— III活性の残存率を測定した。 結果を表 6に示す。
表 6 検体 残存力価 残存率
(U) (%)
AT- II 1-5%リンゴ酸 Na 121.9 97.5
ΑΤ-ΠΙ-5%リンゴ酸 Na-1%ソルビト-ル 123.3 98.6
AT-I リンゴ酸 グリシン -1%ク1ン酸 Na 117.5 93.9
AT- II 1-3%リンゴ酸 Na-1 グリシン- 1 Iン酸 Na 124.2 99.3
実験例 8
AT— ΙΠ溶液 (AT— III l O OUZml) に 3. 5wZv%クェン酸ナト リウムを添加し、 pHを 7. 5に調整して AT— ill液状製剤を調製した。 この 製剤を 40てで 1週間、 または 25でで 1力月保存した後、 AT— III活性を測 定し、 活性残存率を求めた。 結果を表 7に示す。
実験例 9
AT— II〖 溶液 (AT - III 10 OUZml) に表 8に記載の安定化剤を添加 し、 pHを 7. 5に調整して AT— ΙΠ 液状製剤を調製した。 これらの製剤を 40 °Cで 1週間保存した後、 AT - III活性を測定し、 活性残存率を求めた。 結果を 表 8に示す。
表 8
実験例 1 0
AT— III 溶液 (AT— III 100 U/m 1 ) に表 9に記載の安定化剤を添加 し、 pHを 7. 5に調整して AT— III液状製剤を調製した。 これらの製剤を 4 または 25でで 1力月保存した後、 AT— III活性を測定し、 活性残存率を求 めた。 結果を表 9に示す。
表 9
ΑΤ-ΙΠ溶液 (AT— III 1 10 U/m 1 ) に 3 wZv%クェン酸ナトリウ ムおよび 3wZv%リンゴ酸ナトリウムを添加し、 pHを 7. 5に調整した。 こ こにポリオキシエチレン-ボリォキシプロピレン共重合体 (商品名ブル口ニック PF 68) またはポリオキシエチレンソルビタンモノォレエ一ト (商品名 Tween
80、 和光純薬社製) 0. 01〜 0 AwZv を添加して AT— III 液状製剤 を調製した。 これらの製剤を 125 r pmで 25で、 48時間振とうした後、 A T一 III残存活性の測定および不溶性異物について肉眼観察を行った。 結果を表 1 0に示す。 表中の記号は、 ++:不溶性異物が観察された、 土:不溶性異物が わずかに観察された、 一:不溶性異物が観察されなかったことを示す。
界面活性剤の添加により不溶性異物の発生が抑制された。
表 10
実験例 12
液状製剤へのへパリンの添加量と安定性の関係を調べた。
AT— III濃度 1 OUZmlと、 へパリン 0〜500 U/m 1. pH7〜7. 5の条件下で 60て 10分間の加熱処理を行った。 へパリン無添加および 0. 5 UZml存在下では AT— [II活性残存率は共に 5%程度であつたが、 5UZral、 5 OUZmlおよび 50 OUZml存在下では 18 %、 45%および 94 %であ り、 へパリン量が多くなるほど AT— III の安定化傾向が認められた。
実験例 13
本発明の AT— III液状製剤の pHと製剤中の AT— III の安定性との関係を n ' こ。
pH6、 7、 8、 9および 10に調整した AT— III液状製剤 (AT— ΙΠ力 価: 25単位 Zm 1 ) をそれぞれ用意し、 各々 50でで 30分間加熱処理した。 その後各 AT— III 液状製剤の AT - III活性残存率を調べて、 加熱処理に対す
る AT— III の安定性を比較した。
その結果、 pH6の AT— III液状製剤では AT - III は非常に不安定であつ た。 しかし、 pHが 7、 8、 9及び 1 0の液状製剤においては、 その AT— ΙΠ 活性残存率は 52%、 75%、 88 及び 92%と pHが 9〜10の範囲で高く なるほど A T _ II I が極めて安定であることが確認された。
実験例 14
実験例 1 3の方法に準じて、 各 pHに調整した AT— III 液状製剤 (AT— III 力価: 25単位 Zm 1 ) を 55てで 30分間加熱処理して、 その後各 AT— III 液状製剤の AT - III 活性残存率を調べた。
その結果、 pH6において AT— III は非常に不安定であった。 しかし、 pH が 7、 8、 9及び 1 0と高くなるにつれて、 AT— III活性残存率も 24 %、 45 %、 69%、 及び 84%と多くなり、 pHが 9〜10の範囲で AT— III が安定 であることが確認された。
参考例
コーンの冷エタノール分画法で得られた面分 IV— 1のペースト 1 Okgを生理 食塩水 10 O に懸濁し、 硫酸バリウムを 5 w/v%になるように加え、 室温で 30分間攪拌し、 微量に存在するプロトロンビンを硫酸バリウムに吸着させて除 去した。 この上清液を pH6. 5に調整し、 ボリエチレングリコール #4, 00 0を 1 3wZv%となるように加え、 生じた沈澱を遠心分離して除き、 さらにポ リエチレングリコール # 4, 000を 30wZv%になるように加え、 生じた沈 澱を遠心分離して回収した。 この沈殿を冷生理食塩水約 20 ^に溶解し、 予め生 理食塩水で調整されたへパリンセファロースのカラムに注入し、 AT— III を力 ラムに吸着させた。 このカラムを 0. 4 Mの塩化ナトリウム溶液で洗浄して不純 蛋白を除いた後、 2. 0Mの塩化ナトリウム溶液をカラムに流して溶出してくる 部分を回収した。
この AT— III の水溶液にクェン酸ナトリウムを 0. 6Mの濃度に加え、 pH 7. 8に調整した後、 60でで 10時間の加熱処理を施した後、 塩化ナトリウム (最終濃度 3M) およびクェン酸ナトリウム (最終濃度 20mM) を添加し、 pH
7. 5に調整した。 一方、 3M塩化ナトリウム含有 2 OmMクェン酸ナトリウム 緩衝液 (pH7. 5) で平衡化したブチル型ポリビニル系担体 (プチルトヨパー ル 650、 東洋曹達 (株) 製) に AT - III 含有水溶液を接触させたのちに上記 緩衝液で展開し、 未吸着画分を回収した。 続いて 0. 5%クェン酸ナトリウム緩 衝液 (pH7. 5) に対して一夜透析を行い精製 AT— III を得た。